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2010年9月22日 (水)

私の好きな雑誌//ビッグ・イッシュー

 サラ・パレッキーを読み終える。久しぶりのVICの世界で、期待にたがわないもの。物語の舞台が1960年代、私たちの時代におかれていることが緊迫感を強くするように思う。歴史家としては、キング師の行動の実際と対比してみたくなるほどよくできている。細かな事実を詮索し、組み立てていって、全体の物語をあみだす。探偵小説家と歴史家は似ているのかもしれない。

 モレルが戻ってくるのではないかという期待はあっさりくつがえされた。ステディな人はいないという形で、物語は同じペースで続くというのは、VICが元気な証拠であると考えることにする。

 エルトンというホームレスの男の描き方も面白かった。ヴェトナム帰りの男で、ともかくも一人で生きていたいというタイプ。StreetWise という新聞をうっている。

 StreetWiseというのはビッグ・イッシューのようなホームレスの人たちが売る新聞なのだろうか。アメリカには「乞食」(こじきと読むと印象が固定されるので、こつじきと読む)が多く、彼らは当然のような顔をして小銭を要求するというのは息子の感想。その中で、物を売るホームレスの人が目立つのだろうか。

 昨日夕方、本郷三丁目の角にビッグ・イッ一シューの売り手の人がいた。一冊買う。

 本郷三丁目の角に、半年ほど前、最初に定期的に立ち始めたF田さんとは、しばらくする内に、すこし話すようになった。私は、本郷の地下鉄の駅から信号にむけて歩いていき、四つ辻の前で、彼がいるのをみると、そこから彼の方をむいて直線で歩くようになっていた。 

 彼に聞いたところだと、彼は養護施設で育った。そして「変におもわれるかもしれないけれども、最近、教会にいっている」といっていた。どう答えてよいか、すぐには言葉がでず、そして正確にどう言ったかは、もう思い出せないが、「変なことはない。そんなことをいったら、私も十分に変な立場だ」というようなことをいったように思う。 

 彼は2/3ヶ月前に、池袋に場所をかえた。彼のブログによると、アパートに入居することができ、そのパーティをやっている写真がのっていた。今、彼のブログをみたら、伝道の書が引用してあっ た。たしかに現代は、伝道の書やヨブ記が読まれて当然の時代だと思う。ともかく、彼は元気らしい。

 今日の人は、三人目で、少し年の人。前の人、つまり二人目の人は、F田くんが、次の担当の人ですと紹介してくれた。この暑かった夏の日を立っているので、平気だろうかと心配だった。時々辛そうにみえた。今日の人に「彼はどうしたのだろう」と聞いたら、「身体の調子を悪くした」と。「この夏は暑すぎたんではないだろうか」といったが、心配である。

 彼は真面目すぎるほど真面目な感じであった。町に立つことに緊張もしていたように感じる。調子が元に戻ることを願う。アメリカに乞食の人が多いというのは、格差社会とはいっても、一番みじかな寄付の慣習が通行人の側にあるということなのだろう。物乞いの人をいやがる感情があるように感じる日本と比較してしまう。

 ビッグ・イッシューを売るのは当然のことで、あまり緊張しなくてもいいという風習がはやくできるといいと思う。

 ビッグ・イッシューは、いま、一番面白い雑誌だと思う。インタビューと特集と、そしてビッグイッシューが創刊されたヨーロッパの記事、そして小さなコラムからなっている。

 面白い面白いといっていて、なぜ、面白いのか、これまで考えてみたことがなかったが、あるいは編集者がほとんど女の人であるためなのかもしれない。これは、今日、雑誌の一番最後のページをみて知って、驚いたこと。

 第二番目の理由は明かで、ヨーロッパのビッグイッシューの記事の中から、とくに面白いもの、日本の社会からみると意外なことをうまく選んでいるせいだと思う。

 三番目が、真面目であることだろう。とくに、インタビューを受ける人々は社会的に目立っている人、いかにもエネルギーがあるという感じの人々だが、その人たちが雑誌の性格にあわせて、本心を真面目に語るのがよいのだろうと思う。

 今号のトップのリレーインタビューは作家の明川哲也さんという人、スぺシャルインタビューはトータス松本という人。実は、私は、御二人とも知らなかったが、まったく別の分野で一線に立っている人が正面から社会に現在必要なことを語るのをきくのは気持ちがよい。

 普通の新聞や週刊誌などを読んでいても、真面目な記事、面白い記事にはなかなかぶつからない。分厚い朝刊に一箇所か二箇所あるだけというのが普通である。何という無駄だろうといつも思う。

 

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