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2011年1月26日 (水)

中国の歴史資料と清華大学の劉暁峰先生

 昨日は中国の御客様を中心に、史料保存に関する研究集会。懇親会に出て、本当に久しぶりに気持ちよく飲み、夜、遅く帰宅。先輩のFH氏の『かぐや姫と王権神話』についての礼状が届いていて、目がさめた。「目くるめく内容。歴史学の面白さを堪能」という過分のもの。彼はいつも過分の表現で礼状をくれるが、御元気そうでほっとする。礼状にも昨年の夏ばてから回復とある。今年の年賀状でも、何人かに、もう先輩といえる人、あるいは先生といえる人は少なくなってきているので本当にお元気でという文章を何人かに書いたことを思い出す。
 集会の方は、これも本当に久しぶりに中国清華大学の劉暁峰先生にお会いする。もう10年になるのではないだろうか。来られた時に、根津美術館で南宋絵画の展覧会をやっていたので、そこに案内し、美術館の庭で長く話して以来だと思う。あの南宋絵画の展覧会は画期的なもので、図録を買ったのだが、その後、ベルギーの日本学の先生に差し上げてしまい、補充する積もりがそのままになっている。
 報告を終えた劉先生が、本当に久しぶりと寄ってきてくれて、ようやく顔を思い出す。それにしても、二人ながら、あの頃はまだ若かった。先生は、大江健三郎氏の小説の翻訳者としても知られる方。加藤さんの文章だったか、大江さんの文章で、加藤周一氏の北京での講演を組織した中国の日本学研究者の話は読んだが、それが劉先生のことだとは知らなかった。
 先生は平安時代の年中行事が御専門。ただ、日本学全体を研究していて、いま、1945年から1955年の日本の研究をしていると。そのころの日本の変革とエネルギーから学ぶものがあるというお話であった。
 懇親会で話し込むと、私が、根津美術館の庭で、敗戦後、8月15日過ぎから、霞ヶ関は書類を燃やす煙でぼうぼうであったという話しをしたことが、興味をもつ一つのきっかけであったとおっしゃる。それはたしか荒井信一さんからきいた話だが、その記録はいまどうなっているのだろうか。土浦の伯父からは、土浦の航空隊で、やはり同じ時期、大量の書類をもやしたという話しをきいたことがある。伯父にとっては痛切な記憶。史料保存の研究集会の懇親会で、史料を燃した話をするというのも奇妙な話。
 報告は劉先生、山東建築大学の姜波先生。旧村の併合や旧住宅の立て替え、そして中国社会の「現代化」の中で、歴史史料が隠滅の記紀にある。その蒐集・保存・整理・研究が歴史学者としての最大の課題であるという御話に共感。日本でもそうだが、建築学・建築史の方々とは歴史学は話しがあう。しかし、それにしても本当にたいへんそうであった。劉先生が「東アジアで共有すべき文化財」といわれたのは本当に大きな意味があると思う。
 日本からは国文学研究資料館の青木先生から、日本における、それこそ戦後、1940年代末から50年代の史料保存の学界をあげた動きについての説明。ぴったりの応答であり、中国の先生方も学ぶところが多いと感想。そして史料編纂所からは和紙研究の中心になっている高島修復室主任からの話。これもたいへん好評で中国の先生方にはきわめて印象が強かったようであった。
 経済学部の中国史研究者でアーカイヴ学についても詳しい小島浩之先生の中国史料についての日本の中国史学界の蓄積について話は明解。中国の先生がたも、日本の古文書学、史料論を学びたいと強くおっしゃっていた。私は、有名な『文字の文化史』をかいた藤枝晃が、実は、顕微鏡による料紙観察をその当時から重視されていたという話が衝撃的。この『文字の文化史』は「居延漢簡」についての授業で、佐藤進一先生が必読文献として指示されたもの。そこには顕微鏡のことは書いてなかったから、小島さんの話は衝撃的。さすがに先駆者は違うということであろう。
 シンポジウムの後、史料編纂所の見学をしてもらう。意外な人数になり、図書部には迷惑をかけた。
 シンポジウムの正式名称は「中国民間古文書の整理・保存・利用の研究に関するワークショップ」。司会は、湯山奈良博館長で、彼とも久しぶり。『かぐや姫』の神道論は、彼に読んでもらうことが一つの目的であったので、感想を聞く。
 トヨタ財団の助成企画で、経済学部の小島ホールで開催。トヨタ財団の貢献も大きいようであった。
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