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2011年3月19日 (土)

地震火山(10)ーー東大地震研談話会

 昨日の地震研の月例談話会、最初に東北東海岸の大地震の犠牲者に黙祷からはじまった。内容は、基本的に報告そのままで公開する予定であるということであった。公開性を何よりも重視するという司会の方の説明は説得的。
 13時30分から19時過ぎまで。自然科学の学会あるいは研究集会を聞いたのはおそらく始めて。残念ながら聞いている内容の四分の三はわからないが、地震科学の到達点と状況がどうなっているかは何となく分かる。ここまで進んでいるのかという感じがした。それだけにあと一歩で、もっと有効なところへ進み出られるのではないか、出られたかも知れないという気持ちがみえるような気がする。歴史学などとは違う、大事で緊張感のある仕事であることを実感。


 報告の中に「西暦869年の貞観地震・津波について」(佐竹健治、宍倉正展、澤井祐紀、岡村行信、行谷佑一)があり、勉強になった。そのだいたいの内容は「石巻・仙台平野における869年貞観津波の数値シミュレーション」(『活断層・古地震研究報告№8、佐竹等執筆)で読んでいたが、コンピュータシミレーションの実際の画面をみることができた。
 そのシミュレーションで、十和田のテフラの下層にある津波の痕跡によって、貞観津波の状況を復元し、今回の津波と同様のプレート間地震と考えられることが明瞭にわかる。興味深かったのは、867年のものと考えられるものの下層に、だいたい2000年前、3000年前の津波層が確認できるということ。もし紀元前後にもう一つの大地動乱の時代があったということになると歴史学への影響は大きい。地震・津波は世界観に関わる。

 他の報告全体を聞いていると、これだけ研究が進んでいれば、さらに本格的なドライブをかければ、地震・津波の予知あるいは、情報の周知もけっして夢ではないという感じになる。地震国・日本ではさらに本格的な研究の蓄積と人員・体制・予算が必須なことがよく了解できる。
 
 それにしても、福島原発は心配である。
 専門家を結集し、政治・行政・企業からは独立した機関によって、安全確保と規制を行うのはヨーロッパ・アメリカの常識である。アメリカの「原子力規制委員会」(NRC)は、独立機関として全権を掌握している。今回、福島原発の80キロ圏内からのアメリカ人の退避を勧告したのも、この機関。それを知っていれば、オバマはそれを繰り返しただけであることがすぐわかる。これをマスコミは十分に伝えていないのではないか。これは独立機関の判断であって、アメリカの政治的な判断ではない。
 NRCの職員数は3961人。予算は年853億円ほど。日本の原子力安全委員会は11年度予算では7億余。10分の一どころか、100分の一である。それも10年度予算より1億円以上削減されている。
 日本社会は、専門家を尊重しない社会であるということはよくいわれる。これが、原子力発電の問題でもあらわれているというのは怖い話である。今からでも専門家を動員し、十分な権限をあたえた方がよいようなところがあるのではないかと思う。

 地震研究、地震予知、耐震都市計画などについても専門家に十分な権限をあたえれば、相当のことができるだろうというのは、昨日の談話会を聞いていての感想。

 歴史家が日本社会で尊重されないのは、日本が真の意味での「保守性」に欠ける社会であることを示しているというのは、私の持論。日本社会が過去を大事にせず、戦争責任をふくめた過去の失敗や教訓を大事にしないことが歴史文化の無視、悪い意味での「あたらしもの好き」と表裏一体の関係である。それにしても、歴史学の専門性が無視されるのは、まだ取り返しが聞くが、原子力利用の分野で専門性無視というのは怖い話である。

 地震対策ではそうでないことを望む。掛け値なしに「世界トップ」の地震学は無視できないはずである。
 日本列島上の「民族」は共同体である。そして、共同体は、専門家のネットワークを内部的な神経系統として尊重しないと自己統御できない。自己統御の訓練を企業・官僚とは別のルートで行うこと。民族規模の共同体の自己自身への内部観照として、専門性を受けとめる訓練。逆にいえばそういう専門家集団の構えが必要なはず。専門家は、自分の分野でならば、保守的・確実であるとともに果断でありえる。。
いま東京消防庁の隊員の記者会見。通常の仕事でない分野への動員は本当にたいへんそうだ。感動。リーダーいわく「我々は志気高いが家族には本当に申し訳ない」と。人柄がわかる。職への責任感の強さは、我々の美徳。

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