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2011年4月10日 (日)

地震火山22仁和三年の南海トラフ巨大地震(1)

 いま、4月7日11時32分頃、宮城県沖でM7,4、震度6強(栗原市と仙台市宮城野という強い地震が起きた。私の住所の千葉でも長く揺れた。45分現在、女川・福島・東海の原発には(いまのところ、これ以上の)異常はないという報道。3月11日地震の余震。「円を描くような長い地震」。仙台市宮城野では火事が発生という(12時25分には女川原発の外部電源三系統のうち二系統が使用不能という報道)。
 今日は一日会議で、さすがにばてて寝ていたところであったが、この地震で起きあがる。9世紀の東海・南海地震といわれる地震、仁和3年(887)7月30日の地震の史料の読みを提供しておこうと考えた。
 まず、『理科年表』のいうところを紹介する。


「887 8 26(仁和3 7 30)M8,0~8,5)  五畿・七道:京都で民家・官舎の倒潰多く、圧死多数。津波が沿岸を襲い溺死多数。とくに摂津で津波の被害が大きかった。南海トラフ沿いの巨大地震と思われる」。

 『三代実録』の仁和3年(887)地震の史料の原文は以下の通り。

卅日辛丑、申時地大震動、經歴数剋、震猶不止、天皇出仁壽殿、御紫震殿南庭、命大藏省立七丈幄二、爲御在所、諸司倉屋及東西京廬舍、往々顛覆、壓殺者衆、或有失神頓死者、亥時亦震三度、五畿内七道諸國同日大震、官舍多損、海潮漲陸、溺死者不可勝計、其中攝津国尤甚、夜中東西有聲、如雷者二(『三代実録』仁和3年7月30日/887年8月26日(G))

 次ぎに書き下し。

申時、地大いに震動す。数剋を経歴して、震なお止まず。天皇、仁壽殿を出でて、紫震殿の南庭に御す、大藏省に命じ、七丈の幄二を立てしめ、御在所となす、諸司の倉屋および東西京の廬舍、往々にして顛覆し、圧殺さるるもの衆し、あるいは失神し頓死する者あり、亥時また震三度、五畿内七道諸国同日大震す。官舍多く損じ。海潮陸に漲り、溺死の者、勝計すべからず。その中に摂津国もっとも甚だし。夜中、東西に声あり、雷の如きもの二つ(『三代実録』仁和3年7月30日/887年8月26日(G))

 次ぎに現代語訳。

 午後四時頃に大地震が起き、数刻をへても震動が続いた。天皇は仁壽殿からでて、紫震殿の南庭に移動した。そして大藏省に命じて、七丈の幄二つ立てさせ、御在所とした。役所の倉屋および東西京の民衆の家は、相当部分が、転倒・倒壊し、その下になって殺されたものが多い。あるいあh失神して頓死したものもある。10時ころにまた地震が三度。全国(五畿内・七道諸国)でも、この同日に大地がおおいに震えた。官舍が多く損壊して、海潮が陸に漲ってきて、その津波によって溺死したものは数えることができないほどである。そのような津波の被害の中でも、摂津国の被害はもっとも甚だしいものがあった。さらにこの日の夜中、東西に雷のような大音響が二回鳴り響いた。(『三代実録』仁和3年7月30日/887年8月26日(G))

 以上を夜に書いて寝たが、朝のニュースによると東北の人々が昨夜の余震によって大きな被害がでたことにショックを受ける。
 上は、4月8日(金)に書いたもの。しばらく、仁和三年の地震史料の解説をする。これは普通の歴史学者ならば、すぐに解説が書ける史料である。研究者の方は、どうぞご自由に引用注記なく御利用ください(これはこのブログの記事全体についての原則である)。取るべき点があるとしてもプライオリティは主張しません。ただし、役に立つものかどうか、間違いがまったくないかは(申し訳ないですが)保障できません。
 いま、4月10日(日)昼間。テレビで「森は海の恋人」の代表の畠山重篤氏のお宅の様子が写る。畠山氏ご本人も状況を語られる。気仙沼湾の漁業環境の赤潮による悪化から、湾を救うために「牡蠣の森を慕う会」を結成して、大川上流の室根山の植樹運動をやられた方である。相方が「この人だ」というのを聞いて、私も認識をする。NPO法人「森は海の恋人」のホームページを御覧になることを御勧めする。
 これから地方選挙にいってくる。こんな時に選挙を実施する政権というのは何を考えているのかがわからない。
 現在の状況の中で注目しているのは、一つは大企業の経営者陣の動きである。東京電力は相当の内部留保(3兆?)があるはずで、それ以外の大企業の内部留保全体を総計すれば、無慮数百兆にはなるはず。内部留保とは、経営危機と設備更新の備えであるはずであり、こういう国土の環境と人口の破壊の危機、つまり自然的・人的資本の壊滅的危機には、相当部分を、少なくとも一時資金として吐き出してよいはずのものである。
 東北の状況をみるとそれを強く感じる。救援と結びついた復興を人々が一致して進めるためには、誰が見ても、本来、これが必要なはずである。これをマスコミが語らないことが最大の違和感。
 もう一つは、自然科学者の中枢部、いわゆる「原子力村」の人々と工学関係者が、明瞭な反省と決意をまだ語っていないようにみえること。私は、自然科学の人々のエネルギーと善意と発展的な気持ちを評価する立場。がんばってほしい。

追記、後者については次の声明がでているのを知った(午後3時前)。これを読むと、今後、万が一のことがないのを願うばかり。

福島原発事故についての緊急建言
 はじめに、原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします。
 私達は、事故の発生当初から速やかな事故の終息を願いつつ、事故の推移を固唾を呑んで見守ってきた。しかし、事態は次々と悪化し、今日に至るも事故を終息させる見通しが得られていない状況である。既に、各原子炉や使用済燃料プールの燃料の多くは、破損あるいは溶融し、燃料内の膨大な放射性物質は、圧力容器や格納容器内に拡散・分布し、その一部は環境に放出され、現在も放出され続けている。
 特に懸念されることは、溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できないことである。
 こうした深刻な事態を回避するためには、一刻も早く電源と冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることが唯一の方法である。現場は、このために必死の努力を継続しているものと承知しているが、極めて高い放射線量による過酷な環境が障害になって、復旧作業が遅れ、現場作業者の被ばく線量の増加をもたらしている。
 こうした中で、度重なる水素爆発、使用済燃料プールの水位低下、相次ぐ火災、作業者の被ばく事故、極めて高い放射能レベルのもつ冷却水の大量の漏洩、放射能分析データの誤りなど、次々と様々な障害が起り、本格的な冷却システムの回復の見通しが立たない状況にある。
 一方、環境に広く放出された放射能は、現時点で一般住民の健康に影響が及ぶレベルではないとは云え、既に国民生活や社会活動に大きな不安と影響を与えている。さらに、事故の終息については全く見通しがないとはいえ、住民避難に対する対策は極めて重要な課題であり、復帰も含めた放射線・放射能対策の検討も急ぐ必要がある。
 福島原発事故は極めて深刻な状況にある。更なる大量の放射能放出があれば避難地域にとどまらず、さらに広範な地域での生活が困難になることも予測され、一東京電力だけの事故でなく、既に国家的な事件というべき事態に直面している。
 当面なすべきことは、原子炉及び使用済核燃料プール内の燃料の冷却状況を安定させ、内部に蓄積されている大量の放射能を閉じ込めることであり、また、サイト内に漏出した放射能塵や高レベルの放射能水が環境に放散することを極力抑えることである。これを達成することは極めて困難な仕事であるが、これを達成できなければ事故の終息は覚束ない。
 さらに、原子炉内の核燃料、放射能の後始末は、極めて困難で、かつ極めて長期の取組みとなることから、当面の危機を乗り越えた後は、継続的な放射能の漏洩を防ぐための密閉管理が必要となる。ただし、この場合でも、原子炉内からは放射線分解によって水素ガスが出続けるので、万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要である。 
 事態をこれ以上悪化させずに、当面の難局を乗り切り、長期的に危機を増大させないためには、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、関係省庁に加えて、日本原子力研究開発機構、放射線医学総合研究所、産業界、大学等を結集し、我が国がもつ専門的英知と経験を組織的、機動的に活用しつつ、総合的かつ戦略的な取組みが必須である。
 私達は、国を挙げた福島原発事故に対処する強力な体制を緊急に構築することを強く政府に求めるものである。

平成23年3月30日

青木 芳朗  元原子力安全委員
石野 栞    東京大学名誉教授
木村 逸郎  京都大学名誉教授
齋藤 伸三  元原子力委員長代理、元日本原子力学会会長
佐藤 一男  元原子力安全委員長
柴田 徳思  学術会議連携会員、基礎医学委員会 総合工学委員会合同放射線の利用に伴う課題検討分科会委員長
住田 健二  元原子力安全委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
関本 博   東京工業大学名誉教授
田中 俊一  前原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
長瀧 重信  元放射線影響研究所理事長
永宮 正治  学術会議会員、日本物理学会会長
成合 英樹  元日本原子力学会会長、前原子力安全基盤機構理事長
広瀬 崇子  前原子力委員、学術会議会員
松浦祥次郎  元原子力安全委員長
松原 純子  元原子力安全委員会委員長代理
諸葛 宗男  東京大学公共政策大学院特任教授

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