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2011年10月18日 (火)

地震火山47東大の海洋アライアンスでの講演要旨

【報告】海洋アライアンスシンポジウム第6回東京大学の海研究「震災を科学する」(2011/7/14)

下記に東大の海洋アライアンスのアライアンスのシンポジウム「東京大学の海研究「震災を科学する」のページのコピーを載せた。下記がURL.このページに講演レジュメものっています。http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/activity/2011/09/62011714.html

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報告:海洋アライアンスシンポジウム

第6回東京大学の海研究「震災を科学する」

2011年7月14日(木)10:30から,農学部弥生講堂で標記シンポジウムが行われた.海洋アライアンス主催で毎年この時期に行われる同シンポジウムは本年で6回目を迎える.

総合司会木暮教授(大気海洋研究所)の司会で始まり,最初に福機構長の浦辺教授(理学系研究科)から挨拶があった.第1部ではまず,平田教授(地震研究所)が今回の東北地方太平洋沖地震の震源の面積と滑り量が格段に大きかったこと,例えば,陸域において最大1.2 mもの沈降,最大5.3 mもの東方への水平移動が数分間のうちに起こったこと,海底における地殻変動に関しても 東方へ40 m以上移動したことなど,その桁外れに巨大な地震の実態について解説した.

20110714_panorama_view_Furumura.jpg

会場の様子.質疑に答えるのは古村教授.

古村教授(情報学環総合防災情報研究センター/地震研究所)は,東北地方太平洋沖地震に伴う津波の実態に関して,主に,詳細な数値シミュレーションの結果に基づいた解説をした.特に,東北沖に設置されていた海底ケーブル津波計によりキャッチされた波高5 m以上の巨大な津波波形を再現するには,広範囲にわたって連動した地震とともに,それらの震源域の沖合の海溝付近で津波地震が発生したことを仮定する必要のあり,この観点から,南海道地震に関しても,1605年慶長地震級の地震(M8.2),1707年宝永地震級の地震(M8.6)の同時発生,さらに,それらの震源域の沖合の海溝域において津波地震が連動することで,超巨大津波が発生する可能性のあると指摘した.さらに,今回の甚大な津波災害の一つの教訓として,今後は津波の事前予測よりは,津波発生直後警報に力を入れていく必要性のあることが強調されるとともに,その正確な警報発信に向けた次世代津波防災システムの一端,例えば,海底ケーブル津波計による津波実態の早期把握とその波形データを津波シミュレーションに同化させる計画,また,スーパーコンピューター「京」を用いた「地震動,地殻変動,津波」の融合数値シミュレーションの計画が紹介されました.

午後の第2部では,まず,理学系研究科の池田安隆先生に,地質学的な時間スケールの観点からの東北日本島弧-海溝系の長期的な歪み蓄積過程から見た地殻変動の実態を紹介して頂きました.今回の東北地方太平洋沖地震では,深さ50 km以浅のプレート境界域のみが破壊を起しており,それ以深では破壊は起こっていないこと,その深いプレート境界域では今後大きな余効すべりが継続することで,約10年の時間をかけて歪みが徐々に解放され,これに伴って,東北太平洋岸は10年程度の期間をかけて隆起を続けていくであろうとの予想を紹介して頂きました.

続いて,生産技術研究所の中埜良昭先生には,インドネシア・スマトラ島沖地震津波および東北地方太平洋沖地震津波による建物被害に関する実地調査結果のとりまとめと,そのデータに基いて行った,破壊時耐力に関する既存の実験式の有効性の検証結果を紹介して頂きました.

新領域創成科学研究科/大気海洋研究所の芦寿一郎先生には,南海トラフの深海底における様々な断層活動,例えば,地滑り・重力流,崩落堆積物,振動変形,断層変位,湧水活動などに関する定量的な推定手法を,地球深部探査船「ちきゅう」を用いた興味深い深海観測の映像を交えて解説して頂きました.

第2部の後半では,まず,史料編纂所の保立道久先生に,貞観大津波に関する古文書を紹介頂き,その情報から今回の東北地方太平洋沖地震津波との比較を通して,差異/共通点を解説して頂きました.特に,歴史資料を辿ることによって解明された結果に基づき歴史常識を見直すとともに,それを科学化していく必要性があること,その意味で,今後は,文理融合型の研究を推進していく必要性があり,それが将来の防災を考えていく上で必ず役立っていくはずとの提言をして頂きました.

最後に,サステイナビリティ学連携研究機構の福士謙介先生には,今回の東北地方太平洋沖地震津波による東北各都市における上水道および下水道への被害状況とその復旧に向けた現在の状況を紹介して頂きました.特に,今後の有望な防災対策として,自立型水再利用システムの紹介をして頂きました.

総合討論では理学系研究科の日比谷教授が座長となり,会場からの質問票に講演者が答える方式で進行した.参加人数は約170名と例年に比べ少なかったが,各講演者と会場との間では密度の高い質疑が行われた.

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