95「地殻災害の軽減と学術・教育」、学術会議学術フォーラム
これは自宅の玄関の下に自然に生えてきた卯の花。食卓にもってきたが、花の散るのが早く。不評であった。書斎の入り口のところで撮影。右上に小さくみえる写真は、若い頃の歴史学研究会の中世史部会の仲間たちと。みんながみれば見分けがつくかもしれない。
さて、私も関係して学術会議に提案していた「地殻災害の軽減と学術・教育」というテーマの学術フォーラムの開催が承認されたという連絡があった。学術会議第一部史学委員会委員長の木村茂光氏と第三部地球惑星科学委員会委員長永原裕子氏との連名での提案で、趣旨は下記のようなもの。地震学、火山学、防災学、歴史学、教育学などから報告者がでる予定。
次が企画趣旨。
東日本大震災の後、地震学・火山学を中心とした自然科学分野と実学としての人文社会科学の相互連携の必要が明瞭となっている。人文社会科学の側からいえば、歴史地震・噴火の史料や発掘痕跡の分析などの災害要因にかかわる文理融合研究、地球科学の発展と地震列島における防災教育・地学教育の在り方の再検討、地殻災害の予知・警告や危機管理に関わる情報論、減災と経済計画・国土計画の在り方についての抜本的な検討など、さまざまな課題が明らかになっている。自然科学の側からは、まれにしか発生しない大規模地震や火山噴火に関する不確かな情報をどのように社会に伝えるかが問われている。これらの課題は実際には緊密に結びついた問題領域をなしており、フォーラム「地殻災害の軽減と学術・教育」を提案するのは、そのためである。ここで、「地殻災害」とは地震、火山噴火、津波など地殻の活動に誘因される自然災害のことを指す。この間、人文社会科学をこえて問題を検討してきた人々が一堂に会し、地球科学の側の研究の状況、学際領域における文理融合的な研究への要求を直接に聞き、今後の地震・火山噴火をめぐる文理の融合と連携をどのように実現するかを議論したい。現在、地殻災害をめぐって、学術の鼎の軽重が問われている状態にあるといってよいなかで、どのような研究計画と学術体制が必要になっているかについて前進的な提案をすることを目的とする。なお、科学技術学術審議会・測地学分科会・地震火山部会・次期計画検討委員会において2014年よりの五ヶ年の地震・火山噴火予知に関する観測・研究計画を検討中であり、秋にはまとめられる予定である。科学技術審議会の建議によれば、この計画も防災研究との連携や文理融合的研究を強調するものになるはずであり、その趣旨をふまえて学界における討議を行いたいと考える。
こちらからみていると、社会科学の側からの地震学・火山学との協力の体制への取り組みは、経済学・法学などの社会科学の中枢部分では弱いように感じる。法学・経済学が動かなければ、社会科学は動きようがないだろう。彼らは社会科学の中枢にいるという認識が薄いのではないかというのが、ここ20年ほどの、私の一貫した疑い。
« 形而上学という訳をした御仁を「呪う」ーー一つの訳語問題 | トップページ | ジル・ドゥルーズの『差異と反復』の翻訳2 »
「火山・地震」カテゴリの記事
- 講演の予告、内容概略「最初に譲位した天皇、斉明女帝と大己貴(大国主)信仰」(2018.11.04)
- 皇極女帝の近江行幸と地震神。ある博物館での講演会の要旨。(2018.09.15)
- 日本の国の形と地震史・火山史ーー地震史・噴火史の全体像を考える(2018.09.12)
- 平安・鎌倉時代の災害と地震・山津波(『HUMAN』Vol3、2012年12月)(2018.07.07)
- 倭国神話論のために(民俗学との関係)『物語の中世』あとがき公開(2018.03.03)