地震火山,2月1日に朝日カルチャー千葉で講演
2月一日(土)に朝日カルチャーセンター千葉教室で「現在は大地動乱の時代か」という題で、講演をします。
この写真は、産総研の宍倉正展先生の提供
全体のテーマは「地震を歴史から読み解く 奈良時代から江戸時代まで」というもので、「列島の大地は、9世紀、16世紀に地震噴火が激しい時代を経験しています。21世紀がそういう時代になるかどうかは、地震の長期繰り返しをどう考えるかという地震学上の大問題となっています。この講座では、それを千葉のことにもふれながら歴史地震学の視野から考えます」というものです。
地震学、歴史考古、地域史の各分野からの講演になっています。
2/1 現在は大地動乱の時代か 東京大学名誉教授 保立 道久
2/15 元禄地震と大津波 大網白里市文化財審議会会長 古山 豊
3/1 南関東の遺跡から見つかった地震と津波の痕跡
神奈川災害考古学研究所 代表 上本 進二
3/15 地形や地層に刻まれた関東地震の歴史
産業技術総合研究所活断層・地震研究センター海溝型地震履歴研究チーム長 宍倉 正展
私は、ともかく3,11の時の幕張の液状化をどう理解するか、いま取り組んでいる地震神話の話し。そして、9世紀の伊豆諸島の噴火で千葉にやってきた火山灰が疫病のもととされたことなどを話す予定。
下記の史料は火山噴火にともなう火山灰、火山ガスの毒性を示す史料としては稀有のもの。
886年の伊豆新島の火山噴火の事例。「黒雲あり、南海より群起し、その中に電光現れ、雷鳴・地震」。噴火・黒雲・雷電の恠異の三位一体。安房国に大量の火山灰降下。「砂石・粉土」「二三寸」堆積。水田の苗や、山野の草木が枯死。草をたべた馬牛が多数、倒れ死んだとある。
火山灰、「粉土」に、火山ガスの有毒成分が入っていたことを示す。
京都の陰陽寮が「鬼気の御霊、忿怒して祟りをなす」、「疫癘の患」を予言しているのも興味深い。
この史料はぜひ、千葉県の小学校ではかならず教えるということにならないものだろうか。ご存じのように歴史教育のあり方をめぐってはさまざまな議論がある。これはやむをえないことであると、私などは思う。歴史学会のなかでも過去についての筋の通った理論にもとづいてイメージを一致して出すということは実際には相当に無理なので、歴史教育はさらに多様になるのが自然だと思う。しかし、かならず教えなければならない、というよりも経験を伝達しなければならないことというのはあるはずである。この列島の自然のなかで、この郷土がどういう歴史をもったかなどというのは、その筆頭に上がるはずである。そういう知識とそれを伝達するために必要な資料を公共的に共有していくことが歴史の重要な役割であるはずである。過去は変えられないということは、過去に対する知識が公共的な性格をもっているということとイコールである。そう考えなければ歴史教育というものはなりたたない。史料とデータにそってじっくりと教育・伝達内容をくみ上げていく。それを教師のオートノミーの下で、同時にさまざまな専門分野・関係分野との議論と共同のなかで作っていく。そこには政治は関与しない。政治はあくまでの条件整備である。もちろん、現代の社会のなかで、この条件を作っていくことは挑戦的な課題であるはずであるが、そういうことに挑戦しようという政治ではないのが困ったことだ。
ともかく、この四つの講演を聴いていただければ、千葉の歴史地震についての一応の見通しがとれることになると思う。
こういう種類の講座を各地域で、各県、各自治体でやっていくべきだと思うのですが、なかなか思うようには進みません。
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