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2015年11月24日 (火)

歴史学の研究書の世界。『日本史学』(人文書院)

 歴史学の研究書の世界というものがあって、これは一度入るとトラップのように人を捕まえてしまう力をもっている。一度はいるととはいっても、もちろん、半年ほどは集中して入らないと駄目だが、そのとき人をとらえる力は相当にあると思う。
 それは事実を組み立ててイメージが作られていて、それを復元する楽しみのようなものに頭脳がとらわれるからだと思う。それがなんらかの形で自分が直面している現在にふれてくると感じた場合は、さらに決定的なとらわれになる。躓きの石のようなものだ。

研究書の世界
趣旨
 歴史学の研究は研究書を読むことによって始まる。そして研究書は1冊ではすまない。研究を続けることになると、同じ著者の別の本、さらにその歴史家が前提としている他の歴史家の仕事も見えてくるので、そこを芋づるのように掘っていく。こうして地下茎のような研究史というものが目に入るようになると、歴史学の大地ともいうべきものの雰囲気が分かってくる。
 以下の8冊は各時代から撰んだもので、全体を読めば、ある種の「通史」のイメージがわくように工夫したつもりである。「通史」というよりも時代ごとの基礎的な歴史像といった方がふさわしいだろうか。その時代のもっとも大きな特徴というものはどういうものかについての具体性をもったイメージのようなものである。歴史学の仕事は、結局、これを前提として過去を見通していくための足場のようなものを作り、歴史の全体を本格的に考え、人類史の未来についての参照基準を作り出すことにある。現代の世界がもつ問題は深刻で複雑なものであるから、こういう仕事がどういう全体像に結果するか、まだ十分にはわからないが、しかし、歴史家は必死になって仕事をしており、私は、10年立てば、方向が見えてくるだろうと楽観している。
 なお、歴史学は、所詮、歴史家がつくるものである。それゆえに、研究を続ける上では、研究史の概説のような本を読むよりは、個々の歴史家の肉声を知っておくことの方が、ずっと力になると思う。たとえば、『証言戦後歴史学への道』(青木書店、2012年)は、歴史学研究会という在野学会が、その会誌『歴史学研究』の復刻版を出版した際の月報に載った歴史家の随想をあつめたもので、重複をのぞくと、九四人の各分野での代表的な歴史家の文章が集まっている。なまな研究のエピソード、学会の運営の実情をかたる裏話などからなる読み切りの文章なので、臨場感もあってたいへん読みやすい。強くお奨めする。
『日本史学』(人文書院)第四部の前書き。

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