著書

twitter

公開・ダウンロード可能論文

無料ブログはココログ

« サンダースはまだ勝利の可能性も。 | トップページ | アメリカ二大政党制の崩壊と人種問題ーーサンダース、ミシガンの勝利とミシシッピの敗北 »

2016年3月 7日 (月)

サンダースは三勝一敗、善戦を続けている。

0305deregetu_2


 サンダースは善戦を続けている。3月5日は、カンザス・ネブラスカでサンダースが勝ち、ルイジアナでクリントンが勝ち、サンダースが州の数では2勝1敗で勝ち越し。ただ、獲得代議員の数では、ルイジアナが大きいので、クリントン47対サンダース55で若干開いてしまった。クリントンの方が8多く獲得したのである。

 しかし続く6日は、サンダースはメイン州でも勝利し、州の数でいうと、クリントン11対サンダース8にまで追い上げている。これは勝ち続け、州の数だと早晩、サンダースがリードすることになるだろう。これは予備選全体のムードを変える上で大きい効果がある。このパターンは、2008年のクリントン対オバマの時と同じで、オバマは小さい州で確実に勝っていって勝利を治めた。勝ちパターンである。

 サンダースのツイッタが、メイン州の勝利の後、「今夜、昨日につづいてもう一度、我々が民主党予備選の勝利の道をうまく進んでいることが証明された。Thank you,メーン!」といっているのには十分な理由がある。

 前回のエントリーでは、私は、「サンダースには勝利の可能性が残っている」としたが、マスコミ・ジャーナリズムには、そういう論調はなく、専門家をふくめてクリントン勝利は動かないという観測がもっぱらであった。たしかに、現在の状況から考えて、サンダースの勝利は難しい道であることは事実だが、一つの勝ちパターンに乗っていることをきちんと報道し、論評するべきだろう。そういうことができないのは、自分で状況をみないで、「客観的に」報道しようとするからである。その「客観」は世俗の世評にしたがって考えるという態度にすぎない。サンダースは「いいおじいさんにみえる」が、自伝を読んでみると、政治家として筋金入りの古強者、相当の海千山千である。彼が、この先をどう考えているかが注目だと思う。

 ジャーナリズムで奇妙なのは、左に載せたような表を載せないことだ。アメリカの政治の基本が決まる事態について、毎回、こういう表を載せるようにしてほしい。その上で、今後の日程と予想代議員数について報道するのが当然だろう。読者は安易な「観測」を聞きたいのではなく、確実な事実を知りたいのだ。もちろん、プロである以上、予測をするのは当然だが、それは事実を過不足なく伝えた上でしてほしいことだ。

 問題は、代議員数で、3月5日には差が開いたが、サンダースがその差を6日に完全に取り返したことだ。これからは、今後は確実に差を詰めていくことになるだろう。問題は6月7日のカリフォルニアまでサンダースがどこまで差を詰めるかだ。

 現在、クリントンは1130代議員。そのうち特別代議員が458。そして民主党の大統領候補決定に必要な半数は2383だから、クリントンがそこに到達した時点で、一応の勝負がつくことになる。

 サンダースの側に投票する特別代議員は現在のところ22といわれるから、この差は大きい。この差を利してクリントンが半数を確保してしまえば、そこで確定してしまう。ここのところの予測は専門家がアメリカではやっているだろうが、クリントンの側は必死であろう。クリントン・オバマのときの悪夢がよみがえるという訳だ。


 クリントンは、いろいろなボロがでてくる。最近、アメリカで大問題になったのは、ウィキリークスの暴露によって、リビアへの軍事介入にクリントンが積極的に動いたことがはっきりとしたことだ。しかも、軍事介入は混乱を呼ぶとしてCIAが反対したのに、それを無視してクリントンが介入を決定したという。CIAを押し切ったというのは相当の話だ。このおかげで難民問題がさらに複雑化したことは確実である。しかし、私もみてショックだったのは、リビアで飛行機から降りたクリントンと、クリントンが笑いながら、「We came, we saw, he died」(我々は来た。そしてみた。彼は死んだ)とカダフィのことをいっている場面である。これは相当に怖い。


 さて、状況は後になればなるほど大統領選はサンダースのような人物に有利になる。私は重要な要素として、キリスト教会の動きがあると思う。教皇フランシスコは2月17日、メキシコ訪問の帰途、機内でトランプについての質問に「それがどこであろうと、壁を作ることしか考えず、橋を架けることを考えない人は、キリスト教徒ではありません」と述べたという。

 教皇は、昨年9月にアメリカ議会を訪問し、演説したが、その内容は日本では大きく報道はされなかったが、日本のカトリック中央協議会のホームページに載っている(http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/feature/francis/msg0250.htm)。そこですでに南から北に向かう移民問題について述べ、寛容の精神を強くうったえ、しかもネイティヴアメリカンの権利を強く主張し、難民問題についても明瞭に述べている。下記に引用しておく。

 「ここ数百年の間に、莫大な数の人々が、自由に未来を築くという夢をかなえるためにこの地にやってきました。わたしたち、この大陸出身者は外国人に恐れを感じません。なぜならわたしたちのほとんどが、以前は外国人だったからです。わたしは移住者の子孫として、このことを皆さんに申し上げます。皆さんの中の多くの方々も移住者の子孫であるかと思います。わたしたちよりもずっと前にここに住んでいた人々の権利は、残念なことに、つねに尊重されていたわけではありませんでした。わたしは、アメリカの民主主義の精神のうちに、それらの人々や国々に対する尊敬の念を確認したいと思います。過去の出来事は現在の基準では評価しがたいものではありますが、最初に移住者と先住民が出会ったときには、混乱が起こり暴力が行われました。それでも、わたしたちの中にいる外国人が何かを求めてきたら、過去の罪や過ちを繰り返してはなりません。わたしたちは今、「隣人」や周囲のすべてのことがらに背を向けないよう新世代に教えるにあたり、出来るかぎり気高く公正に生きるよう努めなければなりません。一つの国を築くためには、互いにかかわり合わなければなりません。互いに支え合う心を持つために、最善を尽くして敵意を退けるのです。皆さんにはそれができると、わたしは確信しています」。

 現代社会は、第二次世界大戦以来、空前の規模の難民の危機にさらされています。それにより、わたしたちは深刻な課題と多くの難しい決断に迫られています。この大陸でも、何万人もの人々が自分や自分が愛する人々のために、より良い機会を求めて北に向かっています。わたしたちも、自分の子どもたちのために同じことを望むのではないでしょうか。難民の数だけにとらわれてはなりません。彼らを人として見て、彼らの顔を見つめ、彼らの話を聞き、彼らのために出来るだけのことをしようと努めてください。つねに優しく、正しく、兄弟愛にあふれる態度で彼らに接してください。問題になりそうなことはすべて避けようとする共通の誘惑を退ける必要があります。黄金律を思い起こしましょう。「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」(マタイ7・12)。
  
 平和と平等、弱者への十分な配慮などに満ちた社会を作ろうという教皇の呼びかけは相当に明瞭なものである。こういう呼びかけに一致する主張をしている大統領候補が社会主義者、サンダースだけであるというのが、相当な話だ。ともかく、「We came, we saw, he died」と高笑いするクリントンは、とても枠から外れている。

« サンダースはまだ勝利の可能性も。 | トップページ | アメリカ二大政党制の崩壊と人種問題ーーサンダース、ミシガンの勝利とミシシッピの敗北 »

バーニー・サンダースとアメリカ」カテゴリの記事