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2016年4月29日 (金)

地震火山108熊本地震と8/9世紀の肥後(はじめに)

 地震学の石橋克彦氏は、2014年に執筆した『南海トラフ巨大地震』(岩波書店)において二〇一一年三月一一日の東北沖海溝大地震が日本列島におよぼす変動について、「2011年東北地方太平洋沖地震に伴う東日本の地殻変動」(同書九七頁)および図2-17、図2-20などの図表を提示して、次のような概観をあたえた。

 まず第一に地震によって日本海溝沿いの太平洋ー東北日本のプレート境界のつっかえがとれたことによって、震源域近辺の東北日本、つまり列島弓状弧の関東以北の直立部が東向きにすべり、大きく水平に変位した。三・一一でもっとも東に動いた牡鹿半島の平行移動距離はだいた六メートル。それ以降も、だいたい毎年10センチづつ東に動いており、それは現在も止まっていない。これは関東地方における地震、あるいはいわゆる首都直下地震の発生に深い関係をもつ可能性がある。

 第二に、大地震によって太平洋ー東北日本のプレート境界が自由になっても、東方変位が強すぎた福島県浜通りが正断層(引っ張り力による断層)であったことを除いて、三・一一後におきたM5ほどより大きな地震はすべて東西圧縮力により発生している。このような東西圧縮力をすべて太平洋プレートの沈み込み摩擦の結果に帰すことはできず、アムールプレート(ユーラシアプレートのマイクロプレート)の東進が東北沖海溝大地震の後にも動き続けていると想定するほかない。これに直接に対応して、北海道の日本海側から東北地方日本海沖を通って、糸魚川ー静岡構造線にいたるアムールプレート東縁変動帯における断層の動きが注意される。とくに注意すべきなのは、列島の地殻の下に北北西の方向に沈み込むフィリピン海プレートの圧力によって南海トラフ巨大地震が惹起された場合、それがこのアムールプレート東縁変動帯と接続する地域に影響をあたえ、地震が駿河湾奥に及ぶ可能性である。列島全域の変動によって条件付けられる部分があって、南海トラフ巨大地震の発現は多様性が大きいが、この点は留意しておく必要があるというのが石橋の一貫した主張である。

 第三に重要なのは、西南日本のプレート衝突域においても、東西圧縮力による大地震が発生する可能性があることである。これについては、肥後(熊本)地震を論ずる上でもっとも重要なので、原文を下記に引用しておく。


 日本海東縁変動帯と西南日本衝突域の広い範囲のどこかで、今後も東西圧縮力による大地震が複数発生する可能性がある。南海トラフ巨大地震が起こる前に北海道~東北~信越~北陸~中部~近畿~中国~九州地方で直下地震が発生し、中京圏、京都、大阪などでも大震災が生じる畏れも否定できない。またMTL(中央構造線)が紀伊半島~四国北部~伊予灘~別府湾で内陸巨大地震を起こす可能性もある(具体的にどこかは別の研究課題)。


 二〇一六年四月一四日より発生した熊本地震は、別符湾を南西に下った熊本であったという点が異なるが、大局的にいって、MTL(中央構造線)に関わって地震が起こる可能性があるという、この予測が具体化してしまったことを意味している。このような予測が石橋氏のほかにも提出されていたかどうかは知らないが、この予測は列島全体の地殻の変位をふまえたものだけに説得力がある。


 実際に、図(http://www.asahi.com/articles/ASJ4K04XDJ4JPLBJ00Z.html)のような熊本地震後にGPSによって地殻の変位の状況を計測した結果(京都大学西村卓也氏作成、原図、朝日新聞デジタル四月一七日掲載)によると、石橋の図2-20の図の描いた様相がさらに詳細にトレースされている。まず日本列島の弓状弧には、その北半で、東北地方が東側に滑り動く力とアムールプレートが東進する力を合成した巨大な力が働いており、それによって弓状をした列島には、弓の内側から弓を押しつけて弓のそりを開くような緊張が走っている。そして、同時に弓の下半部には、その外側から、北北西に沈み込むフィリピン海プレートの力によって、むしろ弓のそりを強める方向で列島の軸線である中央構造線を緊張させているようにみえる。

 列島を正面からみた人間の身体のイメージで、比喩的に表現すると、斜め上にむけた左手が東北地方、胸の部分が近畿地方、そして真横に出した右手の上腕部が中国地方、そして肱より先を下に向けた部分が九州島ということになるが、その状態で、左手が外側に引っ張られ、右手の脇に下から強い圧力をかけられているという感じであろうか。これによって身体は左に傾こうとするが、それを避けるために体躯に強い緊張が走っているという訳である。

 しかも、右のGPSによる地殻の変位図をによると、九州島は東からフィリピン海プレートの北西向き及び西向きの圧力をうけ、西からアムールプレートの東進の圧力をうけている。そして九州島の中央部にはクサビのような形で別府-島原地溝帯が開き、九州島は南北に割れていくかのような様子がみえる。この割れ目のところにちょうど阿蘇山が開いているという感じである。そして熊本より南は、アムールプレートの押す力が下向きに働いているかのようにみえる。

 再度、右の人体の比喩を使えば、九州島の北半部は右手の上腕部にあたろうか。そこを外側と内側から強く押されて、熊本の辺りで割れ目が入りそうになっているという感じである。しかも、手首より先は外側から強い圧力をうけておされている。それは地名でいえば、ちょうど熊本と鹿児島の県境、昔の地名を使えば肥後国と薩摩国の国堺あたりにあたる。熊本地震は、この下腕の手首に近い部分が傷ついたということになる。

 素人の比喩では仕方ないとは思うが、ともかく、このような形で、剛体としての日本列島は太平洋・アムール・フィリピンなどのプレートの動きによって、列島中軸部、中央構造線に大きな緊張が走っているのであって、現在は、東北沖海溝大地震によって列島には強い緊張が走っており、熊本地震は、そういう状況のなかで起こったのである。

 (以下、続く)

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