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2016年9月 7日 (水)

アメリカの選挙のおそるべき汚さ


 アメリカの選挙にはすでに憲法のレベルで制度的な欠陥が多いというのがアメリカの政治学会の常識であるが、ただ、、制度的な欠陥には歴史的な理由や経過があるものであって、それらを解決するためには一定の時間がかかる。しかし、選挙の実際の運用に関わる問題は、それとは別のレヴェルの問題であり、アメリカの選挙の実際において何よりも驚くべきなのは、その恐るべき汚さである。

 ここでは大統領選挙に限らず、選挙一般について確認していくことにするが、まず第一は、選挙権そのものの問題である。民主主義国家においては国民に選挙権を保障することは何よりも重要な行政の義務である。しかし南北戦争後に制定されたアメリカ合州国憲法修正一五条は、黒人に投票権をあたえたものの「投票権は拒否されることも制限されることもない」という消極規定であって、選挙権を「国民固有の権利」とする(日本国憲法一五条)常識的な規定とは異なる不十分なものであった。しかも、アメリカでは二〇世紀初頭、投票権を国民に自動的にあたえずに事前登録を義務づけ、移民や黒人の投票を抑制する措置がとられた。これは公民権法のなかで成立した投票権法が成立した後も根幹として維持されており、そのためアメリカでは、七〇年代以降も、三〇%ほどの国民が選挙権をもっていない事態が続いている。とくに白人の有権者登録率は約七割、黒人は約六割、中南米系は約五割強にとどまるという実態は、アメリカが民主主義国家とはいえないことを示している。

 こういう国家における政治家や官僚その他、何らかの形で税金によって生活を維持している人間で、選挙権を国民に保障することを第一の義務として行動しない人間は、主権者を主権者と考えない人間であり、また主権者の税金を不当に所得している人間である。そのような人間は民主主義者ではないことはもちろん、そもそも非道徳な人間であって社会的に排除するべき存在である。彼らは、それだけでなく、こういう実態をさらに悪化させようとしている。

 これは社会的な犯罪者あるいはその予備軍であるとしかいいようがない存在であろう。問題は、アメリカではこういう社会的な犯罪者あるいはその予備軍が大きな顔をしていることである。つまり、二〇一三年、アメリカ最高裁は、投票権法にもとづくガイドラインの一部を違憲だとして、州による投票制限の道を開いた。これによって相当数の州が投票制限法を強行し、その中で、(すべての人がもっている訳ではない)運転免許証やパスポートなどの写真付き身分証明書の提示、選挙投票日当日の有権者登録の廃止、事前投票期間の短縮、日曜日の事前投票への制限、事前の住所変更申請などの問題が発生している。投票する時間や手続き条件をもたない人間は実力がないのであって、そういう人間は投票しなくてよい。そういう人間はアメリカ民主主義の誉れにふさわしい人間ではない。そういう人間は二級市民であって、その投票は抑圧してよいという訳である。最高裁は、アメリカの超富裕者(ヴェリー・リッチ)に対して「アメリカの経済のほとんどを所有しているあなた方は、ホワイトハウス、政府、連邦議会、州知事、州議会をも買い占めていい」といったのだ、というのがサンダースの評価である(サンダースHP、issues)。

 さらに汚らしいのは、アメリカでは国勢調査のある一〇年ごとに州の選挙区の形を操作して無風選挙区を作り出す二大政党の裏取引が行われることで、この選挙区の形を怪獣のようにするゲリマンダーといわれる詐術も、最高裁判決によってさらにやりやすくなってしまった。有り体にいえば民主党支持者が多い区域を作って、そこでは民主党が圧倒的に勝利をするが、他の地区では共和党がかならず勝利するか、いい勝負ができるように選挙区の形を操作するのである。とくに連邦下院議員選挙の選挙区は各州の知事・議会において圧倒的に共和党有利のゲリマンダーが行われており、これをくつがえすのはすぐには困難という状況ができあがっているという。
 こういう神経をもつ社会的犯罪者たちは、投票日当日に投票妨害を強行することも辞さない。サンダースは「人々はどの選挙でも投票するのに何時間もまたなければならない。これは国民的な不名誉だ」と述べているが、アメリカの野蛮な社会的犯罪者は、どれを不名誉とは考えない。今回の予備選挙でも問題になったように、不利になりそうなところでは民主党・共和党の裏取引の下で投票所それ自身を閉鎖したり、数を減らすという破廉恥な行動が行われている。

 二〇〇〇年のゴアとブッシュの大統領選挙の際に、投票機械がわざと古いままに置かれているという事実が明らかになったことは世界を驚かせたが、今回、二〇一六年の大統領選挙において、どのような不正が、どのような勢力によってどう行われたか。これはバーニー・サンダースに対する支持が、ここまでに達したという情勢のなかで、今後、さらに赤裸に明らかになっていくであろう。

 破廉恥政治の当人たちにとっては選挙はゲームの対象である。彼らは、そのゲームを巨大な金の動くビッグ・ビジネスとし、そこに巨大な害虫のように寄生している。たとえば、トランプの選対本部議長であったポール・マナフォートはウクライナのヤヌコヴィッチ前大統領のコンサルタントという経歴でロシアのプーチンとの関係もあるという人物で政治宣伝のプロである(二〇一六年八月に辞任)。またビル・クリントンの選挙参謀・政治コンサルタントをつとめたディック・モリスは、スキャンダルで辞任した後、共和党のマサチューセッツ知事、アルゼンチン・ウルグアイ・メキシコの大統領選挙で活動した選挙戦略家で、オンライン投票システム(Vote.com)の代表でもあるという人物である。以前の日本では、こういう存在を政治ゴロといっていたが、最近では、日本でも電通が同じような選挙ヤクザの役割を果たすようになったことはよく知られている。しかし、さすがにアメリカの「政治ゲーム市場」は国際的である。

 ゴアは、イラク侵攻の直前のアメリカ上院が静かだった理由を、議員たちの多数が間近の選挙でテレビコマーシャル枠を買うための資金集めイヴェントに出席していたためだと証言している(『理性の奪還』)。そしてゴアが敗北した大統領選挙の年の選挙戦全体にかかった費用は三〇億㌦であったが、二〇〇八年のオバマ選出の年には五三億㌦にまで達している。バーニー・サンダースがいうように、これは億万長者と企業権益による政治の買い占めである。しかも、二〇一〇年、最高裁のシティズン・ユナイテッド訴訟判決は、諸団体が選挙の前にテレビ宣伝をすることを禁止していた選挙運動改革法を「表現の自由」の名のもとに違憲であるとして金権選挙をさらに野放しにした。このような法律家のことを東アジアでは伝統的に「法匪」と呼ぶことになっている。

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