著書

twitter

公開・ダウンロード可能論文

無料ブログはココログ

« 『永原慶二著作選集』第九巻(歴史理論編)解説 | トップページ | 『老子』二八章ーー英訳してみました。  »

2018年12月10日 (月)

書架散策  永原慶二著『源頼朝』

以前、永原先生について書いた小さな文章もでてきたのであげておきます。
 もう70になったので、書いたメモは上げておかないと残らないので。

書架散策  永原慶二著『源頼朝』


 私のもっている『源頼朝』は、実は従姉妹のもので、高校の頃、彼女の部屋だった田舎の土蔵の二階で手にして、勝手に貰ってしまったものである。自分の部屋をもっていなかった私は、土門拳の写真集があったその土蔵の二階が今でも懐かしい。そこで本書を読んだことが、歴史研究に進む一つの機縁であった。

 永原氏はこの夏に亡くなられたが、本書を刊行した一九五八年、氏は三六歳。その安定した達意の文章には驚くほかはない。

 永原氏は従来の頼朝論を①儒教的な名分論、②「判官贔屓」からの感情的印象論、③山路愛山以来の「平民史学」の自由な歴史叙述の伝統の三つをあげている。そして自己の立場が③にあることを明示しながら、あくまでも激動的な政治史の一部として頼朝を取り上げている。

 本書の特徴は、そういう観点から、政治史のキーとなる頼朝関係の史料を的確に選び出し、周到な説明を加えているところだろう。高校生の頃に読んで、何か読んだこと自身に一種の達成感を感じたのはそのためだったと思う。

 私は、実際にはむしろ永原氏の議論の枠組みを批判することを研究生活の目的としてきた。永原氏からは「判官贔屓」といわれかねないかもしれないが、先日、義経論を書き終わり、ようやく一つの結論をえたような気がしている。

 しかし、うらやましいと思うのは、永原氏の歴史学方法論に対する確信である。本書は政治史を社会構成史の深みから全体的にとらえる視座を正面から打ち出し、しかもそれがわかりやすい。

 どうにかしてそのレヴェルを歴史学の場に復活させたい。そのために何が必要なのかということを、本書は真剣に考えさせるのである。

« 『永原慶二著作選集』第九巻(歴史理論編)解説 | トップページ | 『老子』二八章ーー英訳してみました。  »